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靖国神社の「公式参拝」等に関する意見書

平成25年8月1日
靖国神社の「公式参拝」等に関する意見書
 
内閣総理大臣
 安倍 晋三 殿
新日本宗教団体連合会
                  信教の自由委員会
委員長 岩下 義治

 盛夏の候、安倍総理におかれましては日々ご清祥の趣、大慶に存じます。
 さて、今年も終戦記念日が近づき、総理はじめ閣僚の靖国神社への参拝が注目されておりますが、国務大臣が一宗教法人である靖国神社に「公式参拝」といった形で関わることは、憲法に定める「信教の自由」「政教分離」に違背するものであります。総理をはじめ各閣僚におかれましては、十分にご配慮いただきたく、お願い申し上げます。
 ご高承のとおり、憲法の「信教の自由」と「政教分離」の規定は、数多の犠牲者を出したかつての戦争への反省をもとに定められたものであり、近代国家における自由と基本的人権の根幹をなすものであります。
 総理は、5月14日の参議院予算委員会において、「靖国神社が戦争で倒れた英霊の魂を安んじる場として中心的な施設」との答弁をなさいました。しかし、憲法は、国民がそれぞれ信じる宗教をとおして、戦争犠牲者を慰霊・追悼する自由を保障しております。また、昭和34年に竣工し、政府により追悼式が挙行された国立・千鳥ケ淵戦没者墓苑は、半世紀余の歴史を経て、今や鬱蒼たる緑に包まれ、誰もがわだかまりなく戦争犠牲者を慰霊・追悼できる「無名戦士の墓」として、国民に広く受容されてきております。
 戦争で倒れた方々の御霊を安んじる道を大切にされる総理が、同予算委員会で示された「遺族を含め国民的な敬意を集める場所」とのお考えを深慮いたしますと、今、取り組むべきは国立・千鳥ケ淵戦没者墓苑の拡充であり、同墓苑において、特定の宗教によらない形で戦争犠牲者の追悼を重ねていくことであると思量いたします。
私たちは、今日の日本の自由と繁栄は、戦火に倒れた方々の上に築かれたとの認識から、「信教の自由」をもとに国民一人ひとりが、それぞれ信じる宗教儀礼をもとに、心を込めて慰霊の誠を捧げることこそが、戦争犠牲者の御霊を安んじる真の道であると確信いたしております。
 総理におかれましては、「信教の自由」「政教分離」の原則を再度ご確認たまわり、靖国神社への閣僚等の「公式参拝」を厳に慎んでいただきますよう、あらためてお願い申し上げます。   
 なお、総理は、去る4月の靖国神社の春季例大祭に「内閣総理大臣」名で「真榊」を奉納されましたが、神前に供える「真榊」は、神道において宗教的に重要な意味を有する供物であり、宗教行為となりますことから、熟慮下さいますよう、重ねてお願い申し上げる次第です。 

2013/8/1

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