宗教もしもし相談室
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Headline No.16 「株式会社化」する社会 次世代担う若者の支援を

新宗連 教団人セミナー

内田氏を講師に宗教者の役割を学ぶ
 新日本宗教団体連合会(新宗連、岡野聖法理事長)は2月26日、大阪市の立正佼成会大阪普門館で、「第26回教団人セミナー」を「現代を生きる若者たちと宗教」のテーマのもと開催した。講師は内田樹神戸女学院大学名誉教授。
 開会あいさつで、田中庸仁理事は「変化する時代、社会の中で教団人の働きを学ぶ」というセミナーの趣旨を説明。講演に移り、内田氏が「現代社会における宗教は液状化し、その基盤が崩れてきている」と指摘し、その理由として宗教を含む「社会的共通資本」への市場原理の侵食を挙げた。内田氏によれば、司法(さばき)、教育(学び)、医療(癒し)、宗教(祈り)からなる社会的共通資本は、50年、100といった長いスパンで考えるべきものだが、現代は1年あるいは四半期といった短いスパンで変化しているという。
 その典型的な事例が、国家システムや教育システムの「株式会社化」であると述べ、具体的事例を交え解説した。こうした状況に対して、「現代人は『身体性』を取り戻す必要がある」と力説。宗教者に対しては、「次世代を担う若者たちの霊的成熟を支援するのが宗教者の役割」と語り、「50年後、100年後に、日本の宗教文化の厚みを維持できるかどうかにかかっている」と提起した。
 この後、質疑応答では厳しい環境にさらされた若者への対応について、内田氏は「忍耐強く見守ること」「彼らが安心して『武装解除』し、身体を解きほぐせる場を確保する」「清浄な祈りの場を確保していくことが重要」など具体的な取り組み例を示した。
 講演の後、参加者同士による意見交換が行われ、会員・信徒の育成や教団運営などについて活発な発言が続いた。

第31回庭野平和賞 ディーナ・メリアム氏に

庭野平和財団

 庭野平和財団(庭野日鑛名誉会長、庭野欽司郎理事長)は2月28日、京都市内のホテルで記者会見を開き、第31回庭野平和賞を「女性による世界平和イニシアティブ(Global Peace Initiative of Women―GPIW)」の創設者であるディーナ・メリアム氏に贈呈することを発表した。
 贈呈理由として、性別や東西の違いを超えての平和への取り組みと功績が挙げた。メリアム氏は、国際的な諸宗教の集まりで女性と東洋の宗教伝統が十分に認識されていないことに気づき、2002年にGPIWを設立。諸宗教の集まりでの出席者の男女比のバランスの是正を求め、男女の意見が均衡するよう、女性の宗教指導者の意見も積極的に建言した。
 また、アメリカ人でヒンドゥー教徒でもあるメリアム氏は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教等と、他の東洋の宗教の参加のバランスの確保に努めるなど、男女、東西の不均衡の修正に尽力してきた。
 現在、メリアム氏はGPIWの創設者、議長として活躍するほか、「ハーバード大学世界宗教研究センター」や「国際宗教外交センター」の理事や、ブータン王国の「ブータンGNHセンター」の諮問委員などを務めている。
 贈呈式は5月16日、東京・港区の国際文化会館で行われ、賞状と顕彰メダル、賞金2千万円が贈られる。

ホームとアウェイの問題を考える

支縁のまちネットワーク

 支縁のまちネットワーク(川浪剛、宮本要太郎、渡辺順一代表)は3月1日、大阪市城東区の浄土真宗本願寺派栄照寺で「第3回研究交流集会」を開催した。今回は宗教者の社会活動を巡る「ホームとアウェイ」の問題を考えることを開催趣旨とした。
 近年、宗教者は寺院や教会などの「ホーム」に留まるのではなく、そうした場から離れた領域や現場である「アウェイ」へと積極的に踏み出し、さまざまな社会活動をするべきだと言われるようになってきている。
 浄土宗願生寺の副住職であり、いのち臨床仏教者の会副代表の大河内大博氏が「自坊を離れ社会活動をすることの意義」をテーマに講演。寺院後継者としてお寺の未来に対する危機意識と、僧侶としてのアイデンティティに葛藤しながら、社会活動に乗り出していった体験を語った。
 宗教者が教えを伝え、答えを提示し、導くという「ホーム」での活動に対し、自ら答えを見つけていくプロセスを共に歩み、待つという「寄り添い」の活動を、「アウェイ」である「いのち臨床仏教者の会」で行っていることを説明。しかし、「ホーム」である通夜の席で、教えを伝えるよりも、相手の心に寄り添うことの大切さを感じ、「ホーム/アウェイ」という単なる活動領域の区分の仕方を改めることになったという。
 「ホーム/アウェイ」という区分は、常に流動的で「ホーム」の中にも「アウェイ」があり、「アウェイ」でも「ホーム」の状況がある。前後関係の中で、相手の思いを汲み取り、教えを「伝える」ことと、相手の心に「寄り添う」ことの「ギアチェンジ」が臨機応変に必要であると語った。
 小憩の後、支縁のまち羽曳野希望館の渡辺順一代表、プラサード・ジャパンの川浪剛代表が活動団体の報告を行い、意見交換を行った。


2014/3/6

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