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靖国神社参拝に関する質問に対する答弁書」閣議決定への抗議文

平成27年2月17日
「靖国神社参拝に関する質問に対する答弁書」閣議決定への抗議文

内閣総理大臣
安倍 晋三 殿

 新日本宗教団体連合会・信教の自由委員会は、安倍内閣が、平成27年1月9日、「衆議院議員井坂信彦君提出内閣総理大臣が行う靖国神社参拝に関する質問に対する答弁書」(以下「答弁書」)を閣議決定したことを、国民や遺族の「信教の自由」を侵害する重要な問題ととらえ、強く抗議いたします。
 総理は、答弁書で「靖国神社は我が国における戦没者追悼の中心的施設」との認識を示しています。しかし、憲法は、第20条で「信教の自由」を定め、国民がそれぞれ信じる宗教をとおして、戦争犠牲者を追悼する自由を保障しています。同時に、「政教分離」原則に立ち、政府及び内閣総理大臣その他の国務大臣の地位にある者に、すべての宗教団体に対して、中立の立場をとることを要請しています。
 こうしたなかで、政府が、民間の一宗教法人である靖国神社を「戦没者追悼の中心的施設」と価値判断することは、憲法が禁じる特定宗教の援助、助長、促進に当たるものと言わざるを得ません。
 総理は、靖国神社への公式参拝を「専ら戦没者の追悼という宗教とは関係のない目的で行うもの」としていますが、創建以来146年余の歴史を重ねる靖国神社は、独自の祭式による宗教性をたたえた神社であり、その宗教施設において、御祭神を前に追悼の意を表することは、形式のいかんにかかわらず、純然たる宗教行為であります。
 また、公式参拝について、「宗教上の目的によるものでないことが外観上も明らかである場合には、憲法第20条第3項の禁じる国の宗教活動に当たることはない」としていますが、この答弁によれば、政府を代表する総理が、どのような行為が宗教活動に該当するのかを判断することとなり、ひいては、政府が「宗教とは何か」を決めることをも意味し、直言すれば、政府による宗教そのものへの介入であり、断じて認めるわけにはまいりません。
 私たちは、総理個人の「信教の自由」を否定するものではなく、その役職によって左右されることがあってはならないと考えております。しかるに、安倍総理は、平成24年9月14日、党総裁選挙候補者による共同記者会見で「首相在任中に参拝できなかったことは、痛恨の極み」との心情を吐露されましたが、このご発言は、内閣総理大臣という政治的立場と靖国神社参拝という宗教行為を結びつけた考えを明らかにしたものと受けとめざるを得ません。
 これにより、総理の靖国神社参拝は政治的メッセージを帯びることとなり、また、内閣総理大臣としての「宗教的中立性」が損なわれこととなり、結果として、総理自身の「信教の自由」が制限される形になっているものと思量いたします。
 私どもは宗教者として、国のために亡くなられたすべての戦争犠牲者の追悼、慰霊を多年にわたり、日夜、続けてきたものであり、国民一人ひとりが、自ら信じる宗教、祭祀をもとに、真心を込めて追悼の誠を捧げることこそが、戦争犠牲者の御霊を安んじる真の道であると確信いたしております。
 政府においては、憲法が規定する「信教の自由」と「政教分離」原則を再度ご確認いただき、国民誰もがわだかまりなく戦争犠牲者を追悼することができるよう、賢明な行動をとられますよう、強く求めるものであります。

新日本宗教団体連合会
信教の自由委員会
委員長 本山 一博


2015/2/27

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