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靖国神社の「公式参拝」に関する意見書

平成27年7月28日

靖国神社の「公式参拝」に関する意見書

内閣総理大臣
安倍 晋三 殿 

 終戦七十年となる記念日が近づいてまいりました。私たちは、多年、国のために亡くなられた戦争犠牲者への慰霊、供養を続けてきた宗教者として、総理はじめ政府要職にある方々が宗教法人靖国神社に「公式参拝」という形で関わることは、憲法に定める「信教の自由」と「政教分離」に違背するものであり、厳に慎まれますよう、歴代の内閣総理大臣に申し上げてまいりました。
 総理は、平成二十七年一月九日、「衆議院議員井坂信彦君提出内閣総理大臣が行う靖国神社参拝に関する質問に対する答弁書」において、「靖国神社は我が国における戦没者追悼の中心的施設」との認識を示されました。しかし、憲法は、第二十条で「信教の自由」を定め、国民がそれぞれ信じる宗教をとおして、戦争犠牲者を追悼する自由を保障しています。さらに、「政教分離」原則を定めた憲法が、政府要職に就く総理及び閣僚に、全ての宗教団体に対して中立の立場を求めていることは、明白であります。
 こうしたなかで、総理が、民間の一宗教法人である靖国神社を「戦没者追悼の中心的施設」と価値判断することは、憲法が禁じる特定宗教への援助、助長、促進に当たるものと言わざるを得ません。
 総理は、靖国神社への公式参拝を「専ら戦没者の追悼という宗教とは関係のない目的で行うもの」とされましたが、創建以来一四六年余の歴史を重ねる靖国神社は、独自の宗教祭式を有する神社であり、その宗教施設において、御祭神を前に追悼の意を表することは、形式のいかんにかかわらず、純然たる宗教行為であります。
 また、公式参拝について、「答弁書」では「内閣総理大臣が公的な資格で行う靖国神社への参拝」とした上で、「中曽根内閣総理大臣(当時)による靖国神社参拝においては、玉串料ではなく、供花料を公費から支出している」ことを認め、公式参拝における公金支出を示唆しています。こうしたことから、「公式参拝」は、国家が行う宗教行為そのものであり、憲法第二十条に違反することは明らかであります。
 安倍内閣においては、終戦七十年の節目に、再度、憲法が規定する「信教の自由」と「政教分離」原則をご確認たまわり、賢明なる行動を取られますよう、お願い申し上げます。

新日本宗教団体連合会
信教の自由委員会 
委員長 本山 一博

2015/7/28

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