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靖国神社の「公式参拝」に関する意見書

平成26年8月5日
靖国神社の「公式参拝」に関する意見書

内閣総理大臣
安倍 晋三 殿

新日本宗教団体連合会
信教の自由委員会
委員長 本山 一博


 安倍総理におかれましては日々ご清祥の趣、大慶に存じます。
 さて、今年も終戦記念日が近づき、総理はじめ閣僚の靖国神社への参拝が注目されておりますが、政府要職にある方々が宗教法人靖国神社に「公式参拝」という形で関わることは、憲法に定める「信教の自由」と「政教分離」に違背するものであり、厳に慎んでいただきますよう、お願い申し上げます。
 私たち宗教者は、国のために戦争で亡くなられたすべての犠牲者の慰霊、供養を多年にわたり、日夜続けてまいりました。今日の日本の自由と繁栄は、戦火に倒れた方々の尊い犠牲の上に築かれたものであり、私たちは、国民一人ひとりが、自ら信じる宗教儀礼をもとに、心を込めて慰霊の誠を捧げることこそが、戦争犠牲者の御霊を安んじる真の道であると確信いたしております。
 過去、総理大臣による靖国神社への「公式参拝」に対して、各地で幾度も違憲訴訟が提起されてきました。平成十六年四月には、福岡地方裁判所が、総理による公式参拝が「神道の教義を広める宗教施設である靖国神社を援助、助長、促進するような効果をもたらした」と認定し、「憲法二〇条三項によって禁止されている宗教活動に当たる」との判決を出しています。
 同判決は、政府を代表する総理の「公式参拝」が、宗教の別による慰霊の尊さの軽重を国民に印象づけ、よって「信教の自由」と「政教分離」に対して、重大な影響をもたらしたことを判じています。
 ご高承のとおり、憲法の「信教の自由」と「政教分離」の規定は、近代国家における自由と基本的人権の根幹をなすものであります。自らが信じる宗教により慰霊をするということの尊さにおいて、靖国神社への信仰も、他の宗教施設への信仰も何ら変わるものではありません。重ねて申し上げれば、総理及び閣僚による靖国神社への「公式参拝」は、戦争犠牲者の慰霊という純宗教行為に対する政治判断であり、「信教の自由」と「政教分離」への深刻な侵害であると深く危惧する次第です。
 総理におかれましては、国の最高指導者として憲法が規定する「信教の自由」と「政教分離」原則を再度ご確認賜り、安倍内閣として賢明なる行動をとられますよう、重ねてお願い申し上げます。

2014/8/5

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