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靖国神社「公式参拝」に関する意見書

内閣総理大臣
安倍 晋三 殿 

          靖国神社の「公式参拝」に関する意見書

 終戦から七十一年となる記念日が近づいてまいりました。私たちは、多年、
国のために亡くなられた戦争犠牲者への慰霊、供養を続けてきた宗教者として、
政府を代表する総理をはじめ各閣僚が、靖国神社に「公式参拝」という形でかかわることは、憲法が定める「政教分離」に違背するものであることから、厳に慎まれますよう、歴代の内閣総理大臣に申し上げてまいりました。
 私たちは、国会議員個々の「信教の自由」を否定するものではありません。しかし、憲法は、「政教分離」原則にたち、国家権力に携わる方々に対しては、いかなる宗教教団に対しても中立の立場を堅持していくことを求めております。総理をはじめ政府要職に就く方々による靖国神社への「公式参拝」は、「特定宗教への援助、助長」にあたることが各地の裁判において明らかにされておりますことから、いっそう自重されますようお願い申し上げます。
 総理は、本年五月二十六日、伊勢志摩サミットに出席した先進七ヵ国首脳を伊勢神宮にご案内されました。政府は、これを伊勢神宮への「訪問」であり、「参拝」ではない、と説明されました。しかし、伊勢神宮が正式参拝としている「御垣内参拝」を主要国首脳とともになされた総理の行動は、純然たる宗教行為であります。これを「訪問」とすることは、伊勢神宮の宗教性を踏みにじるものと、深く憂慮いたします。同時にそれは、「政府がどのような行為が宗教活動に該当するのかを価値判断する」ことを意味し、わが国の「政教分離」原則は、重大な危機を迎えるものといわざるを得ません。
 戦前から戦中にかけて、わが国では、多くの宗教団体が過酷な宗教弾圧を被りました。そのきっかけは、近代国家において「政教分離」原則がないがしろにされたことに始まったことを、私たち宗教者は忘れてはおりません。
 安倍内閣におかれましては、終戦七十一年の節目に、憲法が規定する「信教の自由」と「政教分離」原則をご確認たまわり、国民誰もがわだかまりなく戦争犠牲者を追悼することができるよう、賢明な判断と行動をとられますよう、重ねてお願い申し上げます。

  平成二十八年八月八日
                          新日本宗教団体連合会
信教の自由委員会 委員長 本山 一博 

2016/8/9

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