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自由民主党・日本国憲法改正草案に対する意見書(二)

自由民主党
総 裁 安倍 晋三 殿 

       自由民主党・日本国憲法改正草案に対する意見書(二)

 新日本宗教団体連合会は、現在、自由民主党憲法改正推進本部で行われている憲法改正作業に対して、日本国憲法の三大原則である「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を順守するとともに、将来にわたり基本的人権の根幹をなす「信教の自由」を確固たるものとしていくために、下記のとおり、意見を申し上げます。
一、緊急事態条項についての見直し
 日本国憲法改正草案では、緊急事態条項(九十八条、九十九条)が新たに提案されています。貴党・憲法改正推進本部作成の「Q&A」によれば、緊急事態条項は「東日本大震災における政府の対応の反省も踏まえ」との説明が付されています。
 しかし、わが国では、一九五九年の伊勢湾台風での経験をもとに、一九六一年に災害対策基本法が制定され、現在も運用されております。すなわち、大規模自然災害に対しては、東日本大震災などで被災した各自治体の意見を幅広く聴き、同基本法を見直し、整備し、円滑に運用していくことこそが重要であると思量いたします。
 また、緊急事態条項は、外部からの武力攻撃、内乱等の社会秩序の混乱を想定したものとのことですが、外国からの攻撃に対しては武力攻撃事態法が既に制定されており、内乱に対しては、警察法において「緊急事態の特別措置」(七十一条〜七十五条)が制定されております。
 こうしたことから、緊急事態条項については、既に制定されてあるこれらの法律を見直し、整備するとともに、国民各層の意見を聴き、慎重に検討することを求めるものであります。
二、九十九条三項の問題点
 私たちは、貴党・憲法改正推進本部が公表した九十九条「緊急事態の宣言の効果」三項において、緊急事態の宣言が発せられた場合においても最大限尊重されなければならない基本的人権に関して、十四条、十八条、十九条、二十一条が記されていながら、何故に二十条の「信教の自由」が明記されていないのか、未だに理解に至っておりません。
 わが国の歴史を振り返れば、戦前から戦中にかけて国民の権利が制限されるなか、基本的人権の中核をなす「信教の自由」が奪われ、多くの宗教団体が過酷な弾圧を経験しました。こうした歴史を鑑み、九十九条三項において、二十条の「信教の自由」が記載されていないことは、戦前・戦中における宗教弾圧を彷彿とさせるものであり、断じて認めることはできません。
 憲法改正作業においては、日本国憲法の三大原則の一つである「基本的人権の尊重」をより堅固なものとしていくとともに、あらゆる自由権の源にある「信教の自由」の保障を堅持していかれますよう、強く要望いたします。

   平成二十八年八月八日 
                              新日本宗教団体連合会 
                                   理事長 保積秀胤

2016/8/9

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