監視強化による「信教の自由」侵害に強い懸念示す

新宗連信教の自由委員会(信教委、本山一博委員長)は6月5日午後4時、東京都千代田区の自由民主党本部を訪れ、安倍晋三内閣総理大臣宛ての「『組織犯罪処罰法改正案』に関する意見書」を、本山一博委員長が自由民主党組織運動本部長の山口泰明氏に手交した。意見書は山口本部長を通して、安部総理に提出される。
同意見書は「組織犯罪処罰法改正案」(テロ等準備罪/共謀罪)について、同法案第6条にある「組織的犯罪集団」「計画」及び「準備行為」といった文言の定義の曖昧さを指摘。また、その定義の曖昧さから、捜査機関や政府などの恣意的な利用が可能であり、「組織的犯罪集団」と、ある宗教団体がみなされることで監視が強化され、自由な宗教活動(「信教の自由」)に制限が課される可能性に対し、「強い恐れ」と「懸念」を表明している。
結文では「民主主義国家である日本において、基本的人権の基(もとい)である『信教の自由』が侵害される、という歴史が繰り返されることがなきよう」、法案が慎重に取り扱われることを強く求めている。
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内閣総理大臣
安倍 晋三 殿
「組織的犯罪処罰法改正案」に関する意見書
私ども新日本宗教団体連合会(新宗連)は、昭和26年の結成以来、「信教の自由」の堅持を柱として活動を続けて参りました。これらの活動を踏まえ、今般、審議されておられます「組織的犯罪処罰法改正案」(以下、本法案)に関して、強い懸念と意見を申し上げます。
本法案に対して、様々な懸念が、国内外から表明されていますが、私どもは、日本国憲法第20条が保障する「信教の自由」の堅持という観点から、本法案第六条における「組織的犯罪集団」「計画」及び「準備行為」の定義の曖昧さと、本法案による監視の強化の可能性に関して強い恐れを抱いております。
「計画」及び「準備行為」の定義が曖昧であることに加え、当該事実を立証するためには、事前に相当な監視が必要となります。そのため、ある行為を恣意的に「計画」ないしは「準備行為」と解釈し、不当な監視が行われる可能性を否定することはできません。また、「組織的犯罪集団」の定義も曖昧なため、宗教団体を含む特定の団体を監視するための口実として、本法案が濫用されることも危惧されます。これにより、宗教団体及び個人の自由な宗教活動が監視、制限され、そのために自由闊達な宗教活動が阻害される可能性がありますことを、深く憂慮する次第です。
新宗連加盟の少なくない教団が、戦前から戦中にかけて、「治安維持法」によって「信教の自由」を侵害され、宗教活動が弾圧されてきた歴史と経験を有しております。本法案は「治安維持法」と異なり、犯罪行為の抑制を目的とされております。しかしながら、「組織的犯罪集団」と見做されることで、監視が強化され、宗教団体及び個人の「信教の自由」が侵害される可能性があり、その結果、「治安維持法」と同様に、捜査機関及び政府に濫用される可能性があることは否定できません。
民主主義国家である日本において、基本的人権の基である「信教の自由」が侵害される、という歴史が繰り返されることがなきよう、本法案の慎重な取り扱いを強くお願い申し上げる次第です。
平成29年6月5日
新日本宗教団体連合会
信教の自由委員会委員長 本山 一博
2017/6/5
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