宗教もしもし相談室
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新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に対する岡田光央理事長からのメッセージW―東日本大震災10年に寄せて―

令和3年3月10日

 世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を発表してから1年が経ちます。国内外で260万人以上が犠牲となり、感染拡大を抑え込むためにあらゆる人々が努力しておられますが、直接的な感染症による犠牲だけでなく生活に困窮する人、自ら命を絶たざるを得ない状況に追い込まれた人なども増えています。
 今月はまた、行方不明者を含め2万人以上の方が犠牲となった「東日本大震災」からも10年の節目を迎えます。このような時にあたり、あらためて犠牲となられた御霊を追悼するとともに、被災地、被災者が1日も早く平穏を取り戻せるように、そして今なお身命を賭して被災地再生の働きに尽力している方々に対して、新宗連諸職者と共に衷心より祈りを捧げます。
 東日本大震災が発生した日について、宮城県石巻市立大川小学校の記事が掲載されていました(※)。「あの日」巨大津波の後、小学4年生・武山詩織さんが友達に宛てた「手紙」が強く胸に響きます。
 大震災の後、同級生を亡くした児童たちは月命日に手紙や歌などそれぞれの表現できる形で、亡き友や先生に自分の想いを伝えました。書くことによって、突然姿の見えなくなった先生や友の居場所を心の中に作っているのだと思います。
 「だれかへ
 私これからどうしよう。友達がいない。親友がいない。神様どうしよう。神様助けて…。友達をください。親友をください。まえの大川にもどりますように、まえの学校にもどりますように、まえの生活にもどりますように。まえの友達・親友にもどりますように、まえの日本にもどりますように、まえみた世界にもどりますように…。」
 詩織さんの大切な宝物は「友達」です。チラシの裏に書かれたこの文章は死に直面した少女の心の奥の叫びなのです。<私これからどうしよう。友達がいない。親友がいない。神様助けて…。まえみた世界にもどりますように>
 それから10年が経ち彼女は二十歳となり春から障害者支援施設に就職するということです。
 中学生の頃、詩織さんは「みんなは4年生のままなのに自分だけ年とっていつか会えた時に自分だけおばあちゃんなんて嫌だ」と母に話しました。すると母から「死んだ後の世界は楽しかった時の姿に戻るんだよ」と言われ少しホッとしたそうです。まさしく死に直面した母娘が覚ったものは「死者は楽しかった時の姿に戻る」というあの世=霊界の実相でした。
 この母娘の切なる叫びは宗教宗派を超えたあの世の実相を見たのではないかと思われるのです。苦難の道を歩く先にみんなが笑って待っている時に出会えることを被災者の家族は信じています。
 「一見不条理と思われる出来事も神仏からの思し召しとして拝み、信受する心を身につける」‐これは容易なことではありませんが、深い信仰心に基づいた、感謝と慈しみの心を広げて、個々の小さな祈りや希いを結集して大きな力へと転じていくことができるに相違ありません。
 人知を超えた自然災害やウイルスの蔓延など、苦難の時代にあっても尚、宗教者には目に見えざる世界を伝える役割があり、神仏の実在を説き、「愛他の精神」を一人でも多くの人に広げていく責務があると信じます。

公益財団法人 新日本宗教団体連合会
理事長 岡 田 光 央
                                      
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 ※毎日新聞 3月7日朝刊1・4面「神様 友達を返して」

2021/3/10

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