宗教もしもし相談室
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新宗連理事長 年頭所感

―結成70周年記念事業を展開―
人心救済や社会浄化 歴史を紡ぐ
一人ひとりに寄り添う宗教の役割

令和5年1月1日   
公益財団法人 新日本宗教団体連合会 理事長 石 倉 寿 一   

 謹んで新年のごあいさつを申し上げます。
 私は昨年6月の新宗連理事会におきまして第9代理事長に就任いたしました。岡田光央前理事長には4年間にわたり、大役をお務めいただき、深く感謝申し上げます。
 新型コロナウイルスパンデミック(世界的大流行)の発生から、間もなく3年が経とうとしていますが、未だ終息には至っておりません。この感染症により亡くなられた方も既に668万人を超えました。人類は、この感染症との遭遇により、さまざまな価値観、生活様式の見直しや転換を図っています。あらためてこの感染症の影響により亡くなられた方々に哀悼の誠を捧げるとともに、世界中の人々が力を合わせてこの困難を乗り越えていけるよう祈念いたします。

 「巡礼団」―慰霊と鎮魂の祈り
 さて、新宗連は一昨年10月17日に結成70周年を迎え、「今、そして未来につなぐ信仰の力と光」をテーマに、今年度末まで記念事業を展開いたします。
特に、新型コロナ感染拡大防止を考慮して延期していた記念の諸事業を、昨年4月から、感染対策、人数制限等を施して、11月末までに執り行うことができました。
 戦争犠牲者、自然災害犠牲者の慰霊供養と鎮魂を第一として、歴史と真摯に向き合うこと、風化を防ぎ、新たな災禍発生の抑制を祈願することを目的とした「巡礼団」の取り組みは、兵庫県姫路市と神戸市、岩手県釜石市、福島県いわき市、長崎市、広島市、宮城県石巻市、沖縄県糸満市の計8カ所において、地元の総支部・協議会の多大なご協力をいただき、懇(ねんご)ろな祈りを捧げることができました。
 毎夏、新日本宗教青年会連盟(新宗連青年会)が挙行する「戦争犠牲者慰霊並びに平和祈願式典」(「8・14式典」)に象徴されるように、「慰霊」や「平和祈願」は私たち宗教者だからこそできる尊い使命であります。国内だけでなく、世界中に未だ浮かばれない御霊が多数に存在しています。こうした目に見えない世界への働きかけとなる「祈り」は、私たちが日々勤めることができる宗教実践です。長引く戦争や紛争の早期終結とともに、世界平和祈念を続けてまいります。
 
 スローガンの現代的意義  
 記念座談会では、70年の歴史の中で特に大切にしてきた新宗連4つのスローガンの現代的意義の探求と、後世に伝承するものは何かを主題として、新宗連の要職にある方々が出演され、多いに語り合っていただきました。
特に、昨夏以降の旧統一教会問題をめぐる騒動や社会から問われる「宗教、信仰とはどうあるべきか」という問題を見つめた時、「信教の自由を守ろう」「信仰心を広めよう」「宗教協力を進めよう」「世界の平和に貢献しよう」という4つのスローガンは、いずれも、今こそあらためてその意義を探求するべき大切なテーマであります。

 「信教の自由」と「信仰」の要諦
 昨年10月の理事会で決定した新宗連の「令和5年度事業大綱」には、「不安、不信といった人々の苦悩漂う社会の中で、一人ひとりに寄り添う宗教の役割が求められている」という一文を加えました。
 信教の自由の遵守と信仰心の推進は元来矛盾する概念です。基本的人権の根幹である信教の自由には、「信仰を強制されない自由」も含んでいることはいうまでもありません。これを前提とした上で、「個人の信教の自由を尊重しつつ、すべての人の宗教心・信仰心を涵養することが、大切な使命であるとの信念において共通している」というのが新宗連の立場です。
 私は仏教徒ですので、ここで教主釈尊の仏典から「七仏通誡偈」を紹介します。
 ・諸悪莫作(しょあくまくさ)―もろもろの悪をなさず
 ・衆善奉行(しゅうぜんぶぎょう)―もろもろの善い行いをし
 ・自浄其意(じじょうごい)―自らその心(意)を浄める
 ・是諸仏教―これがもろもろの仏の教えである
 これは、仏教の教えでありますが、私はここに、あらゆる宗教による信仰の要諦が示されているのではないかと思います。特に、「善を進め、一人ひとりがその心を浄める」という部分、さらに、その心を他者へと振り向けていく働きは、新宗連に加盟する各教団が志向し続け、努めてきた大切な信仰実践であると思います。「宗教とは何か」「信仰とは何か」が問われる今こそ、この原点ともいうべき信仰姿勢を確認することが肝要です。
 信仰により浄められた心は、やがて身近な生活や人生、社会に影響を与えていきます。一人ひとりの主体的な信仰による善の力と光を世にあらわして、より一層の人心救済や社会浄化に努めて、新宗連が大切にしてきた歴史を紡いでまいりたく存じます。
 新宗連は「信教の自由の精神を高揚し、宗教団体の公益性を支援することにより、豊かな人間性の涵養とより良い社会の形成に寄与し、もって世界平和の実現に貢献する」という目的を掲げています。宗教不信、宗教団体への忌避意識等が拡大している現下の状況ではありますが、私たちはこの問題を対岸の火災視することなく、自省と改善の糧として真摯に受け止めてまいります。
 そして、共に手を携えて、日々の宗教活動、信仰生活、一人ひとりの使命に邁進してま いりましょう。
 こうした日々の努力が、宗教協力による、より良い社会形成と、世界平和につながるものと信じます。
 皆さま、本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。 

2023/1/1

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