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Headline No.155 能登半島地震ーボランティア参加者アンケート

 参加者の半数以上 「復興が進んでいない」
 新日本宗教団体連合会(新宗連、石倉寿一理事長)ならびに新日本宗教青年会連盟(新宗連青年会、宮本泰克委員長)は先ごろ、能登半島地震復興支援ボランティア(第1次隊〜第4次隊/4月2日〜7月12日)の参加者を対象にアンケートを実施し、無記名方式で9月20日現在、56件の回答が寄せられた。
  
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 アンケート結果によると、半数以上の参加者が「復興が進んでいない」といった印象を抱き、震災から8カ月が経過してもなお、被災地の厳しい現状に深い衝撃を受けていることが明らかとなった。
 アンケートでは「ボランティアの役割」に関する意見も多く寄せられた。「ボランティアとは被災者の心に寄り添うこと」というNGOスタッフの言葉に共感する声もあれば、支援活動は「0から1の段階まで進めるもの」であり、その後の大規模な復興には、国や地方自治体による迅速かつ積極的な対応が不可欠との指摘もあった。加えて、中長期的な支援の必要性を訴える声も複数寄せられた。
 一方で、ボランティア活動を通じて得られた人々との絆や交流の経験が参加者にとって有意義だったとする意見も散見された。特に「人の優しさ」や「仲間との絆」に感銘を受けたという意見が目立ち、被災地の住民が困難な状況にあっても前向きに生活している姿に心を動かされたという参加者もいた。
 さらに、「人の強さ、たくましさを感じ、自分も何かできることをしたい」という声もあり、ボランティア活動が参加者の意識を大きく変えたことが伺えた。
 同時に、参加者からは「スキル不足を感じた」という声もあり、ボランティア活動の前提として事前準備の重要性が課題として浮かび上がった。
 今回のボランティア派遣は多くの参加者にとって貴重な経験となり、被災地支援への意欲を一層高める契機となった。新宗連ならびに新宗連青年会によるボランティア派遣は年内を目途に継続して行われる予定であり、支援活動の広がりが期待されている。

 支援の現場から
 晩秋の冷たい風が頬をかすめる季節、石川県輪島市では、新宗連の第8次ボランティア隊が懸命に支援活動を続けている。9月21日の豪雨で甚大な被害を受けた奥能登で、泥のかき出しや家財道具の運び出しに精を出す彼らの姿がある。
 そんな中、ある男性ボランティアから届いた一通のメールが心に響いた。中古の軽トラックを購入し、それを被災地での作業に役立てたいという思いが綴られていた。男性は仕事の合間を縫い、11月に2週間の支援参加を決めている。彼は4月から何度も現地に足を運び、ボランティア活動を人生の生きがいとしている。その献身的な姿勢には、被災地NGO恊働センター現地スタッフ、増島智子さんも厚い信頼を寄せる。
 ボランティア活動は、単に「支援」を提供するだけではない。支援する側もまた、被災者から多くを受け取る。感謝の言葉や住民のたくましさが、参加者たちに新たな力を与え、人と人が支え合う―その相互のつながりこそ、ボランティアの本質だろう。
 輪島市の和食店の経営者も、復興の最中に再び災害に見舞われた現実に嘆きながらも、ボランティアへの感謝を口にする。こうした言葉を聞くたび、被災者に寄り添い、共に歩むことの大切さを改めて実感する。
 新宗連の災害支援活動は、物理的な支援にとどまらない。宗教の壁を超えたつながりが、この現場でも力を発揮している。70年以上にわたり、戦争犠牲者の慰霊やユースフォーラムを通じて築かれた絆が、今もなお息づき、支援活動を支えているのだ。
 「最後の一人まで」。被災地NGO恊働センターのこのモットーは、取り残される人たちに目を向け、耳を傾け、丁寧に向き合うボランティア精神そのものだ。被災地の復興には時間がかかる。だからこそ、長く息の続く支援が不可欠である。
 奥能登の被災地では、地元住民とボランティアが協力しながら緊急支援を進めているが、マンパワーの不足は深刻だ。地震と豪雨という二重の被害を受けたこの地域において、復旧の 道のりはさらに厳しさを増している。それでも、支援の手を緩めるわけにはいかない。
 被災地に足を運び、自分の目で見て、手で触れ、感じること―それがボランティアの原点であり、支援活動の本質なのだろう。
 アンケートには、ボランティア参加者からの声が寄せられている。「被災地の方々と直接触れ合い、少しでもお役に立ちたいと思って帰ってきました」「住民の方に逆に気遣いをいただき、人の強さやたくましさを感じました。自分も今いる場所でできることをさせていただきたいと思いました」。心を尽くして人々に向き合い、笑顔で帰路につく。このささやかな喜びこそが、ボランティアの一番の魅力なのかもしれない。


2024/11/6

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