アーユス仏教国際協力ネットワーク(松本智量理事長)は2月27日午後、東京都品川区の日蓮宗本立寺で「2024年度アーユス賞」の授賞式(第1部)を開催した。同賞は国際協力NGOの発展に貢献した個人や団体を表彰するもので、2013(平成25)年のアーユス創立20周年を機に設立され、今年度の「NGO賞(茂田賞)」には被災地NGO恊働センター顧問の村井雅清氏が選ばれた。
村井氏は阪神淡路大震災を機に被災者支援活動へ従事し、「阪神淡路大震災『仮設』支援NGO連絡会」(現・被災地NGO恊働センター)を設立。以来、国内外の災害支援に尽力したほか、海外では計53回にわたりコーディネーターとして活動し、長年にわたる災害支援の実績が評価された。
新宗連は、村井氏が顧問を務める被災地NGO恊働センターとともに、阪神・淡路大震災(1995年)から東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)、能登半島地震(2014年)に至るまで、新宗連国際救援金の寄託やボランティア活動への参画を通じて被災地支援に取り組み、30年以上にわたり協力関係を築いている。

登壇した村井氏は「ボランティアは社会のすき間を埋める存在」とし、行政の制度が行き届かない場所に寄り添い、支援する重要性について説いた。特に、阪神淡路大震災の発災時には60万人以上の市民がボランティアとして駆けつけ、「ボランティア元年」と呼ばれる契機となったことを振り返り、「制度の隙間を埋める新たな市民社会のかたちが生まれた」と語った。
さらに「足湯ボランティア」の取り組みについても触れ、「お湯につかることで被災者は自らの苦しみを自然に語り始める。その『つぶやき』を聞くことが支援の第一歩」と指摘した。能登半島地震の被災地でも「ただそばにいるだけで支えになることを改めて実感した」とし、被災者に寄り添う姿勢の重要性を明示した。
近年のボランティアをめぐる情況については「制度化が進み、自由な発想での支援が難しくなっている」と懸念を示し、「本来ボランティアは行政の指示を待つものではなく、市民の自主的な活動として存続すべき」との持論を展開した。また、「被災者と共に炊き出しを行うことで、『生きている実感がわいた』という声があった」といったエピソードを紹介し、小さな工夫が被災者の力になることを訴えた。
最後に「ボランティアは特別なことではなく、誰でも参加できるものであるべき」とし、「現在74歳だが、今後も市民活動の一員として寄り添い続けたい」と決意を示した。
トークセッションでは、日本国際ボランティアセンター(JVC)代表理事でアーユス理事の熊岡路矢氏と共に「市民活動の原動力」をテーマに意見を交わした。
今回のアーユス賞の「NGO新人賞(奨励賞)」には、今後の活躍が期待される3人が選ばれた。医療通訳の活用や福祉従事者との連携を通じて、在日外国人母子の保険医療に尽力する松尾沙織氏(シェア=国際保健協力市民の会)、市民グループ「こどもみらいlabo」を設立し、開発教育協会(DEAR)で、広報・編集業務のほかワークショップ講師も務める松川清美氏(開発教育協会)、ヨルダンでのシリア難民支援を皮切りに、パレスチナで国際支援の最前線を担う吉田明子氏(パルシック)がそれぞれ受賞した。
さらに、「特別功労賞」には評価論や社会開発論を専門とし、NGO・NPOの評価制度構築に尽力してきた明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授の源由理子氏が選ばれた。
2025/3/13
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