国際宗教研究所・宗教情報リサーチセンター(RIRC=略称・ラーク、井上順孝センター長)は3月25日午後、東京都杉並区の佼成図書館視聴覚ホールでシンポジウム「オウム真理教問題の深層―地下鉄サリン事件から30年」を開催した。1995(平成7)年3月20日に発生した地下鉄サリン事件から30年を迎え、事件の本質に改めて迫るとともに、情報環境の変化を踏まえた現代的課題についても議論が交わされた。

続いて、フォトジャーナリストの藤田庄市氏が「司法が避けた宗教的動機解明への一級資料」と題して発題。事件において宗教的動機が十分に解明されなかった点を批判し、「麻原彰晃の思想と教団の宗教性に対する総合的な分析はいまだなされていない」と指摘した。さらにオウム真理教の後継団体「Aleph(アレフ)」が10億円超の賠償命令に応じていない現状にも言及し、「事件は過去のものではなく、今なお現在進行形の課題として向き合うべき」と訴えた。
清泉女子大学准教授の井上まどか氏はロシアにおけるオウム真理教関連資料の重要性とその活用可能性について報告。1990年代初頭、ロシアは日本に次ぐ布教拠点となり、最盛期には4万8千人を超える信者を擁していた。「活動禁止後も信者らによるロシア語のウェブサイトを通じた情報発信が続いており、反社会的・現世否定的な思想の一部が今も一定の訴求力を持ち得る状況にある」と述べた。その上で「ロシアにおいてオウム真理教がいかに説かれ、なぜ支持されたのか。そして現在、その背景に何があるのかを問い直す必要がある」と提起した。
第2部「複雑化する情報環境を踏まえ」では、インターネットやSNS上における宗教情報の拡散とその影響について多角的に議論が展開された。
國學院大學准教授の大道晴香氏は、学生の授業課題から宗教認識の変容を分析。断片的な情報の受容が宗教理解に誤解を招いている実態を指摘し、「情報を読み解くリテラシーと、自ら問いを立てる姿勢が一層求められている」と語った。
筑波大学助教の土井裕人氏は、大学における宗教学教育の現場から発言。宗教2世問題への関心は高まる一方で、宗教を他人事と捉える学生の姿勢に課題があると分析。当事者意識をもって学ぶ姿勢とともに、SNS時代には誤情報への対応力と宗教リテラシーの涵養が不可欠と語った。
RIRC研究員の藤井修平氏は陰謀論やフェイクニュースの拡散メカニズムと対策を分析。情報の広がりには感情的共鳴や不信感が背景にあるとし、「宗教情報の発信においても透明性と信頼の構築が不可欠」と語った。
2025/4/10
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