宗教者災害支援連絡会(宗援連、島薗進代表)は4月1日午後、東京都千代田区の真如苑友心院で「阪神・淡路大震災から30年―宗教者の支援活動を振り返る」をテーマにシンポジウムをオンライン併用で開催した。
宗教関係者をはじめ、行政関係者や市民などが参加し、宗教者による災害支援の過去、現在、未来の在り方について活発な議論を交わした。
冒頭、島薗進代表が趣旨説明を行った後、文化庁宗務課の山田泰造課長があいさつ。「全国には18万近い宗教法人があり、その存在は地域社会の要。災害時には宗教施設が避難所となるなど、宗教者の社会的役割がますます求められている」と述べた。
また、内閣府政策統括官の水野忠幸参事官は令和6年能登半島地震の事例をもとに国の防災施策について説明。避難所環境の整備や福祉的支援の拡充、在宅・車中泊避難者への対応強化など、「場所から人へ」という支援の転換が求められている現状を紹介した。さらに災害救助法の改正により福祉サービスが支援対象に加えられたことや、被災者援護協力団体の登録制度創設についても報告がなされた。
続いて、真下谷神社の阿部明徳宮司、キリスト全国災害ネットの北野献慈代表、新日本宗教団体連合会(新宗連)の石倉寿一理事長、天理教災害救援ひのきしん隊の冨松基成本部長、真如苑救援ボランティア(SeRV)の西川勢二代表、全日本仏教会の和田学英事務総長、大阪大学大学院の稲場圭信教授の7氏がそれぞれ発題を行った。また、コメンテーターとして全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)の明城徹也事務局長、内閣府「TEAM防災ジャパン」世話係で、オフィス園崎の園崎秀治代表が登壇した。
新宗連の石倉理事長は、阪神・淡路大震災から30年を迎える節目にあたり、自身の被災体験とその後のボランティア活動について述懐。その中で、避難所で弁当を配った際、被災者から叱責を受けたエピソードを披歴。「支援者の善意だけでは通用しない現実に直面し、被災者の苦しみを初めて実感した」と話した。また、「支援をする側が、実は一番多くのことを学ばせてもらっている」とし、「被災者との触れ合いの中で得た気づきが、その後の宗教協力や災害支援の深化につながった」と振り返った。
新宗連では阪神・淡路大震災以降、東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨など、度重なる災害のたびに信徒や会員によるボランティアを現地へ派遣。「昨年の能登半島地震では延べ800人以上が参加し、幅広い世代が支援にあたった」と報告。「震災は起きないに越したことはないが、そこに神仏からの問いかけがあるとすれば、私たちは何を学び取るべきか。これからも宗教の枠を超え、人と心でつながる支援を続けていきたい」と述べた。
大阪大学大学院の稲場圭信教授は今年3月31日に内閣府が公表した南海トラフ巨大地震の新たな被害想定を踏まえ、宗教者と宗教施設が果たすべき災害支援の役割に言及。マグニチュード9を想定した被害では、避難者数が最大で1230万人に及ぶとの予測に触れ、「避難所は明らかに不足し、従来の体制では到底対応しきれない」と危機感を示した。
過去30年にわたる宗教者の災害支援活動の軌跡についても触れた。阪神淡路大震災以降、宗教者による自発的な支援活動が展開され、やがて災害ボランティアセンターやNPO、行政との連携体制へと発展した経緯を回顧。「30年前には宗教者の支援活動に対する社会の目も厳しかったが、今やその必要性は広く認識されている。宗教施設と自治体の災害協定も進展しており、次世代に向けた支援文化の構築が急務」と訴えた。
7人の発題を受け、コメントに立った明城事務局長は、災害支援における「調整」の重要性を説いた。東日本大震災での支援現場の混乱を教訓に、2016(平成28)年にJVOADが設立された経緯を語り、「支援が被災者に的確に届く状態こそが調整の本質」と強調。「支援者間での共通認識がなければ連携は成立しない。平時からの人材育成と仕組みづくりが必要」と語った。

質疑応答では宗教団体や宗教者が災害支援活動に携わることの意義をはじめ、支援者自身の安全と精神的安定を確保するには、どのような体制が求められるかといった質問があり、活発な意見交換が行われた。
2025/4/16
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