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Headline No.169 第84回拡大宗法研―不活動宗教法人の実状テーマに/首都圏総支部教化活動懇談会―救世真教と大本を学ぶ

 第84回拡大宗法研―不活動宗教法人の実情テーマに
宗法研
 新日本宗教団体連合会(新宗連)の宗教法人研究会(宗法研、仙波達治座長)は3月17日午後、東京・代々木の新宗連会館を会場に、オンライン併用による「第84回拡大宗法研」を開催した。テーマは「不活動宗教法人の実情について―国と宗教の歴史をふまえて考える」。講師には文化庁宗務課専門職の大澤広嗣氏と、課長補佐の中島充伸氏を迎え、歴史的経緯や現行の政策的対応について解説を受けた(写真)。
 近年、宗教法人に対する税制上の優遇措置を利用し、制度を悪用した不適切な所得隠しやマネーロンダリングの事例が、社会的な問題として注目を集めている。こうした実態を踏まえ、不活動宗教法人の問題を「宗教界全体に関わる喫緊の課題」と位置づけ、宗務行政の実務担当者から現状および具体的な対応策について説明を受けるとともに、その背景にある様々な要因への理解を深めた。
 大澤氏は「不活動宗教法人」という語の初出が1969(昭和44)年であることを紹介した上で、1917(大正6)年にはすでに「空き寺」の売買が問題視されていたことに言及。戦前の宗教団体法、戦後の宗教法人法を経た制度の変遷を概説し、特に単立法人において創始者の死後、活動が停止し法人だけが残る実態を説明した。また、1966(昭和41)年の文部省通知に触れ、財産管理の適正化を促す警鐘だと指摘した。
 さらに、文化庁は1972(昭和47)年より不活動宗教法人の実態調査を本格的に開始しており、近年では特に神道系法人を中心に、活動実績のない法人が約5%に上ることが明らかとなり、礼拝施設を持たない法人も確認されていると報告。包括宗教法人による自主的な整理も進み、神社本庁や天理教などは早期から不活動法人の解散や再編に取り組んできた経緯を振り返った。
 続いて、中島氏は文化庁が近年推進している不活動宗教法人対策の現況について解説した。2023(令和5)年3月31日には「宗務行政の適正な遂行について」と題する通知を発出し、事務所備付け書類の提出を督促するとともに、未提出法人に対する過料手続の徹底を方針として明示。また、同庁は23(令和5)年度に1件、24(令和6)年度に2件の不活動状態にある宗教法人に対し、実地調査の結果を踏まえて解散命令を請求。さらに、不活動宗教法人の問題はインターネットを介した法人売買にも波及しており、「歴史ある寺院譲ります」などの違法すれすれの広告が後を絶たない現状に言及。これに対し、文化庁は「違法情報等対応連絡会」を通じて取引の助長防止を呼びかけているほか、ホームページ上で関連情報やマニュアルを広く周知していることを紹介した。
 不活動宗教法人の増加には、人口減少や後継者不足といった社会的背景が影響しており、2023(令和5)年時点における不活動宗教法人は全国で4,431法人にのぼる。うち約9割が被包括宗教法人であることから、今後の整理推進においては、包括宗教法人との連携が不可欠との見解を示した。
 また、文化庁は今後も、不活動宗教法人対策マニュアルの改訂、全国の担当者を対象とした会議の開催、ホームページによる広報強化など継続的に進める方針を明示。その上で「不活動宗教法人対策は喫緊の課題であり、行政のみならず包括法人や地域社会の協力を得て、日本全体で取り組んでいく必要がある」と結んだ。
 質疑応答では、宗教法人に対する解散命令請求の実態や、宗教法人の悪用事例に関する質問などが寄せられ、活発な議論が交わされた。

 首都圏総支部―教化活動懇談会 救世真教と大本の教えと祈りを学ぶ
 新宗連首都圏総支部(本山一博会長)は4月17日午後、新宗連会館を主会場にオンライン併用で「教化活動懇談会」を開催した。救世真教会長の新井光興氏と、大本東京宣教センター長の橋本伸作氏を講師に招き、各教団の教えと祈りの実践について講話を行った。
新井会長奄ニ 
 新井会長は救世真教の創始者・小野田松造教主の生涯を振り返り、教団の基本理念と教えについて語った(写真)。はじめに、人間は心(霊)と肉体から成るとする「霊体併行」の理念を紹介し、心を正すことの意義を強調。さらに、小野田教主が掲げた「信条」に言及し、特に「積極は善 消極は悪」という教えについて、行動を起こす勇気の大切さを説いたうえで、現代においても変わることのない心の指針と述べた。また、新井三知夫・前会長から受け継いだ「誓い」を引用し、信仰実践の礎として毎朝唱えていることを明らかにした。
 続いて、新井会長は三つの祈りを紹介。第一に、人のための祈りとして「ご浄霊」を挙げ、第二に、自然への祈りに触れ、「聖地の救世殿(みろくでん)を中心に自然への畏敬と感謝を育む行事を営んでいる」と話した。第三に、平和への祈りを紹介。小野田教主は1964(昭和39)年に欧州6カ国を歴訪した際、諸宗教間対話の必要性に鑑みて詠んだ歌「考えの違う人ども憎み合うことのなき世に成し遂げんかも」を引用し、「この精神に基づき、考え方の違いを認め合い、共存共栄を目指すことこそが教団の基本方針」と結んだ。
 大本東京宣教センター長の橋本伸作氏は、大本の代表的な神事である「大本節分大祭」(2月2日・3日)と「大本歌祭」(8月6日)を、映像作品を交えて紹介した(写真)。
 まず大本節分大祭について、「鬼を国祖・国常立尊(くにとこたちのみこと)と捉え、『鬼は内、福は内』と唱えながら生豆を撒く神事」と説明。人々が飢餓や災害に遭うことなく、穏やかな一年を過ごせるよう祈願するものであり、「争いや災害が多発する昨今、私どもは常に『大難を小難に、小難を無難に』という開教の原点を忘れることなく、祈りを捧げていきたい」と述べた。
 一方、大本歌祭は1935(昭和10)年に再興された行事であり、短歌や和歌を詠み、日頃の感謝の気持ちを神に捧げることを通じて、宗教と芸術を融合させた祈りの場であると紹介。
 さらに、教団の「人類愛善会」の活動にも言及し、宗教間協力や世界連邦運動、エスペラントの普及などに尽力してきたことを紹介。今年で創立100周年を迎えるにあたり、10月12日には「綾の聖地エルサレム 大本歌祭」の開催を告知。式典名に冠したエルサレムは平和の象徴であり、「将来的には中東エルサレムでの歌祭開催も視野に入れている」と展望を語った。





2025/5/20

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