「戦争を超え、和解へ 諸宗教平和円卓会議」をテーマに掲げた第3回東京平和円卓会議が7月1日から3日まで、東京都内のホテルで開催された。
世界宗教者平和会議(WCRP)の各国諸宗教評議会(IRC=国内委員会)の代表者や紛争地域の宗教者、政府関係者ら12カ国・地域から約120(オンライン参加を含む)が集い、WCRP国際委員会(フランシス・クーリア・カゲマ事務総長)、同日本委員会(戸松義晴理事長)、国連文明の同盟(UNAOC、ミゲル・アンヘル・モラティノス上級代表)が共催し、アジア宗教者平和会議(ACRP)、WCRP国際活動支援議員懇談会などが後援した。
同会議は戦争や暴力下にある国々の宗教指導者が一堂に会し、紛争後の宗教者の役割と和解に向けた対話を促すとともに、諸問題の解決に向けた具体的な道筋を示すことを目的としている。
初日の開会式では、チャールズ・ボー枢機卿(ミャンマー・ヤンゴン大司教)の平和の祈りに続き、WCRP日本委員会会長の杉谷義純氏(天台宗妙法院門主)が出席者を歓迎した。杉谷会長は世界各地で深刻化する紛争を一刻も早く終わらせるためには宗教の垣根を越えた対話と協力が不可欠と主張し、「会議の目的はこの悲劇を終わらせ、人々が平和で安全に暮らせる世界を実現すること」と訴えた。併せて「対話によって育まれる信頼こそが問題解決の鍵であり、平和への道」と語った。
国連文明の同盟(UNAOC)上級代表のモラティノス氏はビデオメッセージを通じて歓迎の意を表し、クーリア事務総長も参加者を歓迎した。
クーリア事務総長は宗教指導者が道徳的リーダーとして果たすべき役割を説き、「私たちは信頼される道徳的な声として、平和の終焉的存在ではなく不可欠な設計者」と述べた。さらに「分裂には団結を、絶望には希望をもって応えるのが私たちの答えであり、祈りだけでなく共に行動することこそ和解は実現する」と訴えた。
続いて、立正佼成会次代会長の庭野光氏、エマニュエル・アダマキス府主教(カルケドン長老府主教)、シャンティ・アシュラム会長のケゼヴィノ・アラム博士、WCRP国際活動支援議員懇談会共同代表の岡田克也氏(元副総理)がそれぞれ開会のあいさつを述べた。
庭野氏は、釈尊の「怨みに報いるに怨みを以てしたならば、ついに怨みの息むことがない」という教えを引用し、人類が生き残る鍵は非暴力にあると強調。非暴力は弱さではなく、人類を救う力であり、宗教者は平和を語るだけでなく、日々の行動で平和を体現すべきと訴えた。
さらに、支配ではなく協力を重んじる仕組みや、共感を育む教育、分断ではなく尊厳を守るリーダーの必要性を指摘。諸宗教間の対話を具体的な行動に結びつけ、尊厳と平和的共存、協働に基づく対話を通じて、平和という奇跡を共に生み出そうと呼びかけた。

会期中、複数のセッションやグループディスカッションが開かれた。国会内での特別セッションでは、国会議員と宗教指導者が意見を交わし、信仰共同体がいかに平和構築に貢献できるかを探求した。また、本会議では、紛争地域出身の若者を未来の平和構築者として育成する「諸宗教青年平和交流プログラム」の実施が発表された。
閉会式―声明文を採択、赦しと和解促す
閉会式では、金光教泉尾教会教会長の三宅光雄氏とミャンマー委員会のピン・ニャウ・バ・タ僧正による平和の祈りが行われた。この後、エマニュエル府主教が3日間の議論を振り返った上で「宗教指導者は意思決定者ではないが、地域社会に希望を伝え、影響を与えることができる」と述べ、提言された5年間の行動計画を着実に進める重要性を強調。「紙の上の言葉を現実にするのは容易ではないが、努力と祈りが成果を生む」とし、平和への取り組みを続ける決意を示した。

最後に、戦争と暴力に苦しむ人々への祈りと連帯を誓う声明文が採択され、アラム博士が読み上げた。声明では、仏教、キリスト教、イスラームなどの宗教指導者が紛争地に心を寄せ、平和は実現可能との信念を示した。宗教指導者は地域で信頼を築き、赦しと和解を促す「橋渡し役」として行動すべきと強調。また、すべての生命の尊さを守り、暴力には対話と赦しで応じる姿勢を示した。女性の貢献を平和構築に不可欠と位置付け、軍縮、人道支援、礼拝所保護、避難民支援の強化、諸宗教による青年の平和交流など具体策を呼びかけた。さらに、宗教者、市民社会、政策立案者の連携を深め、「東京平和プロセス」として無条件停戦や青年交流、国民対話の推進など、共同行動計画を明記した。
2025/7/9
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