
島薗進代表のあいさつに続き、真宗大谷派能登教務所所長の竹原了珠氏(代読)、全国曹洞宗青年会の高柳龍哉氏、真宗大谷派西照寺の日野史氏、真言宗千手院の北原密蓮氏、そして認知症カフェ「夢小屋23」を主宰する松本二三秋氏がそれぞれ「令和6年能登半島地震」における被災地支援の現状と課題について発題した。
真宗大谷派能登教務所の竹原氏(代読)は「能登半島地震からの復興に向けて―現状と真宗大谷派の取り組み」と題して発題。応急仮設住宅約6882戸の整備状況と、期限後の経済的負担や地域コミュニティの分断による孤立を最大の懸念点として挙げた。その上で、門徒と寺院のつながりを維持するため、被害状況に応じた宗派経常費制度の導入や、助成金を活用した見舞金支給、物資支援、追悼法要の補助金制度を進めていると説明した。
寺院再建には多くが支援を必要としており、5、6年先を見据えた継続的支援の必要性を強調した。また、地域との新たな連携として、寺院と自治体の防災協力協定締結を5市町村に提案し、宗教者が地域防災に貢献する姿勢を示した。
高柳氏は全国曹洞宗青年会による「おぼうさんカフェ」の取り組みを紹介した。同カフェは仏教が地域に根付く土地柄を生かし、仮設住宅や公民館での写経や法話を通じて、被災者の心の復興を支えてきたと報告。「物理的な支援だけでは癒やせない心に寄り添うことこそ僧侶の役割」と強調した上で、「心のケアには長期的な視点が不可欠であり、僧侶が地域の“心のインフラ”として機能することが大切」と明示。今後も地域に根差した活動を継続する考えを示した。
真宗大谷派西照寺の日野氏はSNSを通じて全国に支援を呼びかけた発災直後の活動を振り返り、輪島市での炊き出しや物資提供、避難所・仮設住宅での御用聞きの取り組みを報告した。「法話を聞きたい」という被災者の声を受け、法話会やチャリティ音楽イベントを通じて地域コミュニティの再生に努めたことも紹介。さらに、地元大学や企業と連携し、こども食堂と寺院を拠点に孤立防止の仕組みづくりを進めていると打ち明け、「状況に応じた柔軟な支援を寺院と地域が協力して進めたい」と述べた。
真言宗千手院の北原氏は、傾聴カフェ「カフェデモンク穴水」の取り組みを紹介した。布教や布施を目的とせず、宗教者としての立場を超えて臨床宗教師として被災者の心に寄り添い、傾聴の場を提供していると説明。現在は輪島市や穴水町に加え、7月から志賀町の公民館でも月1回実施する意向を明らかにした。
また、中高生の心のケアを目的とした「スタディーデモンク」も立ち上げたが、生徒との信頼関係の構築を課題に挙げ、「能登特有の先祖供養や墓、仏壇の問題など、宗教者だからこそ寄り添える心の復興支援に尽力したい」と意欲を示した。
「夢小屋23」を主宰する松本氏は中部臨床宗教師会と連携し、避難所での炊き出しや物資搬送、仮設住宅での傾聴カフェを通じて、被災者一人ひとりに寄り添った支援活動の様子を振り返った。支援の核として、何かを始める前に寄り添う「サポート」、進行中を見守る「フォロー」、愛と敬意をもって関わる「ケア」の三つを掲げ、「一人暮らしの高齢者の孤独感を少しでも和らげたい」と語った。
総合討議では、真如苑救援ボランティア(SeRV)の在家信徒が自主的に週1回、足湯ボランティアを継続していることが報告されたほか、「被災者の心情やストレスは簡単には変わらない。だからこそ傾聴を続けたい」との声が寄せられた。また、「多くの宗教者がそれぞれの現場で支援を行っていると知り、孤独感が和らいだ。今後もつながりを深め、支援の輪を広げていきたい」との意見も出された。
2025/7/21
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