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Headline No.181 都宗連と東京都が包括協定説明会開催

 宗教施設を災害時の拠点に
都宗連
 東京都宗教連盟(都宗連、佐原透修理事長)は7月25日午前、東京都文京区の東京カテドラル・関口会館で「都宗連防災包括協定説明会」を開催した(写真)。今回の説明会は、4月28日に都宗連と東京都が「東京の防災力の向上のための連携協力に関する協定」を締結したことを受け、宗教施設を災害時の避難所や帰宅困難者の一時滞在施設として活用するにあたり、具体的な情報共有を目的として行われた。当日は、東京都総務局総合防災部の担当者を講師に迎え、協定の趣旨や今後の取り組みについて詳しく説明がなされた。 
 冒頭であいさつに立った都宗連の佐原透修理事長(立正佼成会)は、都宗連が防災に関する取り組みを始めて8年になることを振り返り、「宗教団体が何かを強制されるのではなく、できることを東京都と共有し、災害時に社会貢献の一端を担うことが目的」と協定の意義を強調。立正佼成会が杉並区と連携し、帰宅困難者500人を3日間受け入れる協定を結んでいる事例を紹介した上で、「都内には規模や設備に差がある宗教施設が多いため、都宗連が窓口となり支援内容を集約する必要がある」と述べた。 
 続いて東京都側から、小平房代・総務局総合防災部危機管理調整担当部長が登壇し、協定締結に至る経緯を説明。2017(平成29)年に都宗連からの施設提供申し出を契機に協議が始まり、4月に包括協定が結ばれたことを明らかにした。小平氏は「能登半島地震でも宗教団体が避難者支援に尽力したと聞いている。東京都としても今後の災害に備え、宗教施設の活用に期待している」と話した。 
 次に、総務局の野澤正幸・事業調整担当課長は、東京都の地震被害想定と支援体制について解説。都心南部直下地震が発生した場合、区部の約6割が震度6強以上となり、建物被害は19万棟超、死者は6148人、避難者は約299人、帰宅困難者は約453万人にのぼると推計されていると説明。帰宅困難者の一時受け入れ先となる「一時滞在施設」は現在1281カ所・約47万8千人分が確保されているが、対象者の7割程度にとどまっており、拡充が急務であるとした。 
 併せて、都内ではすでに1万カ所以上の「災害時帰宅支援ステーション」が設置済みで、今後も拡充を進める方針が示された。さらに、東京都独自の情報管理システム「キタコンDX(帰宅困難者オペレーションシステム)」を活用し、発災時の混乱防止に向けた体制整備についても紹介があった。 
 このほか、伊東秀典・避難所運営担当課長は「避難所とは、個々の事情に配慮したストレスの少ない避難生活の場」と定義。都内では3200カ所の避難所と1600カ所の福祉避難所を確保しているものの、高層建築物の普及により、在宅避難の増加が見込まれており、避難所の在り方の再検討が必要と指摘。「宗教施設には、子どもの居場所の提供や心のケア、ボランティア拠点、物資配布の支援拠点など、避難所機能の一端を担ってほしい」と協力を呼びかけた。
 質疑応答では、宗教関係者から実践的な意見や質問が寄せられた。 
 日本宗教連盟理事で都宗連顧問の宍野史生氏は、「協定締結までに8年を要した」と振り返り、「井戸水の提供」や「駐車場の活用」など、宗教施設が果たし得る多様な役割に言及。「備えとは、常に準備することではなく、すぐに対応できる状態を整えること」との考えを示した。
 さらに、文化財を抱える施設の不安や喫煙所の設置、周辺の保育園・病院との情報共有の必要性を挙げた上で、「6`圏内での地域連携が有効」と提案した。
最後に佐原理事長は、宗教団体と基礎自治体の協定締結が進みにくかった背景として「政教分離」があったとしつつ、「都との包括協定により法的な課題は解消された。今後は基礎自治体との協定推進が鍵となる」と結んだ。

2025/7/29

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