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Headline No.183 比叡山宗教サミット38周年「世界平和祈りの集い」

 日本被団協・田中代表委員、原爆の残虐性と核兵器廃絶を訴える
 比叡山宗教サミット38周年「世界平和祈りの集い」が8月4日午後、滋賀県大津市の天台宗総本山・延暦寺で開催され、宗教者や関係者ら約450人が参集した。集いは「平和の式典」と「平和の祈り」の2部構成で行われ、世界の恒久平和と諸宗教間対話による共生の実現を誓った。
田中氏
 延暦寺会館で行われた「平和の式典」では、天台宗の細野舜海宗務総長の開式の辞に続き、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)代表委員の田中煕巳氏が「核兵器も戦争もない人間社会を」と題する講演を行った(写真)。
 田中氏は冒頭、「原爆は人間が使ってはならない兵器。たった一機の爆撃機によって街は白い閃光と爆風に包まれ、何万人という市民が焼き尽くされた」と述べ、当時の惨状を証言。「光で視界を奪われ、爆風で家屋が倒壊し、屋外にいた人々は熱線によって焼かれた」と、原爆の残虐性を克明に語った。
 昨年のノーベル平和賞受賞にも言及し、「被爆者の声は過去の叫びではなく、今を生きる私たちに進むべき道を示す“道徳的指針”。ノーベル委員会が、被団協の証言活動に世界的意義を見いだしてくれたことは、名誉であると同時に、次世代への責任を負うもの」と主張した。
 さらに、先ごろ広島と長崎を訪問したノルウェー・ノーベル委員会のヨルゲン・バトネ・フリードネス委員長が「被爆者の声は世界が道を見失いかけたときの倫理的なコンパス」との言葉を紹介。長年にわたり語り継がれてきた被爆者の証言こそが、核兵器の「使用を許さない」という世界的な倫理観を支えてきたことを改めて訴えた。
 また、現在の核兵器をめぐる国際情勢に深い危機感を示し、「世界には今も1万2千発の核兵器が存在し、そのうち3千発以上が即時発射可能な状態にある。いつ、どこで使われてもおかしくない」と警鐘を鳴らしたうえで、「唯一の戦争被爆国である日本こそ、核兵器禁止条約に署名・批准し、核廃絶の先頭に立つべき」と訴えた。
 加えて、「私たちに残された時間は少ない。だからこそ、次の時代を担う若者たちが被爆者の声に耳を傾け、人を愛し、平和を守る心を育むことが核なき未来を築く礎となる」と力を込めた。
 この後、「ユニセフ支援金委託式」が行われ、日本ユニセフ協会の早水研専務理事にユニセフ支援金が手渡された。

 宗教代表者らが「平和の祈り」を捧げる
 一隅を照らす会館前の「祈りの広場」での「平和の祈り」では、神社神道代表の戸内結律子氏と、仏教代表の犬山空翼氏が青年を代表して「比叡山メッセージ」を朗読。「平和とは、単に戦争がないということではなく、人間どうしが睦み合う融和の状態、人類共同体の実現をいう。およそ正義や慈悲のないところに平和はない」と訴えた。
比叡山
 続いて、新日本宗教団体連合会(新宗連)の石倉寿一理事長(大慧會教団会長)をはじめ、日本宗教連盟協賛5団体、日本ムスリム協会、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会、世界連邦日本宗教委員会の各代表、天台宗の藤光賢座主が登壇し、それぞれが平和への祈りを捧げた(写真)。
 藤光賢座主は主催者代表としてあいさつに立ち、「真の平和とは、自己主張を超えて他者やすべての生命と慈しみをもって共生すること」と語り、自然災害や戦禍が続く現代において、宗教者の役割の重要性を強調。「終戦から80年を迎えた日本が、核兵器廃絶と非暴力社会の実現に向けて先頭に立つべき」と訴えた。
 このほか、ローマ教皇庁や世界仏教徒連盟から寄せられた平和メッセージも紹介され、ローマ教皇庁からは駐日大使であるフランシスコ・エスカランテ・モリーナ特命全権大使が登壇し、ローマ教皇庁諸宗教対話省のジョージ・ジェイコブ・クーバカド長官のメッセージを代読した。
 最後に延暦寺の獅子王圓明執行が「閉会の辞」を述べ、「平和の祈り」の集いを締めくくった。
 

2025/8/10

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