宗教もしもし相談室
宗教に関する各種の疑問やトラブルに対する電話相談室です。

Headline No.211 第38回教団人セミナー講演要旨

假谷美香氏が語る、指導とハラスメントの境界と相手の尊厳を守る伝え方

「何を言うか」だけでなく「どう伝えるか」

 新宗連は10月6日、仙台市内のホテルで、第34期第2回理事会後、「第38回教団人セミナー」を開催した。「『すべてのいのちを尊ぶ世界』実現のために私たちができること―ハラスメントのない安心社会をめざして」をテーマに、和貴社会保険労務士法人代表社員の假谷(かりや)美香氏(写真)が講演し、世代間の価値観の違いや、指導とハラスメントの境界、相手の尊厳に配慮した伝え方について、具体例を交えて語った。講演要旨は次の通り。
◇       ◆        ◇
26.10.06/新宗連全国総会(第34期第2回理事会、学習会・夕食懇談会)/大出_8050.JPG
 私は企業の新入社員研修などを通して、若い世代と接する機会が多くあります。そこで感じるのは、世代によって教育環境や育ってきた背景が大きく異なるということです。「昔はこれくらい我慢した」「厳しく言われて成長した」という自分の経験が、今の若い人にそのまま当てはまるとは限りません。
 昔のやり方がすべて間違っていたわけではありません。ただ、「自分たちの頃は大丈夫だったから、今も大丈夫」とは言えない時代です。現在は、働く人の尊厳や就業環境を守ることが、より明確に求められています。令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況によると、相談件数は119万8010件に上り、高止まりが続いています。
 パワーハラスメントを考えるとき、私は三つの視点が大切だと考えています。一つは「立場の違い」です。役職だけでなく、年齢や経験、専門知識、人間関係も、相手にとっては断りにくさにつながります。二つ目は、その言動が本当に業務や組織運営のために必要なのかということ。三つ目は、言い方や方法が適切かどうかです。たとえ内容が正しくても、「だからお前は駄目なんだ」と人格そのものを否定したり、人前で辱めたり、必要以上に繰り返したりすれば、相手を萎縮させます。大切なのは、相手を自分とは違う感覚を持つ人として理解しようとすることです。
 例えば、失敗して落ち込んでいる若い人に「私たちの頃はこれくらいで落ち込まなかった」と言うのではなく、「今回、どこがうまくいかなかったと思う?」と問いかける。過去の自分と比較するのではなく、今起きている事実に向き合い、本人に考えてもらうことが建設的な指導につながります。
 また、「昔からこうしてきたのだから、言われた通りにやりなさい」と伝えるだけでは、相手は納得しにくいものです。組織にはルールがあり、守ってもらう必要がありますが、なぜそうするのか理由を説明し、相手の意見にも耳を傾けることが大切です。結婚や出産、交際相手など私生活に関する話題も、親しみのつもりでも、相手が答えたくないときに繰り返せば問題になり得ます。
 一方で、何でもハラスメントになるわけではありません。今、職場では「何を言ってもハラスメントと言われるのではないか」と、管理職が必要な指導までためらうことがあります。しかし、人を育てるためには注意や指導は必要です。ここで区別したいのが「叱ること」と「怒ること」です。怒るのは自分の感情をぶつける自分本位の行動ですが、叱ることは相手の成長を願い、可能性を引き出すための相手本位のコミュニケーションです。
 基本は、まず事実を確認する。次に「私はこう思う」と自分の考えを伝える。そして、どう行動してほしいのか、その理由を説明し、最後に相手への期待を伝える。この順序を意識するだけでも、伝わり方は変わります。今日から意識していただきたいのは、「自分は平気だった」を基準にしないこと、「悪気はなかった」で終わらせないこと、相手の断りにくさを考えること、そして必要なことはきちんと伝えることです。
 ハラスメントという言葉が広がったからといって、これまでの指導がすべて否定されるわけではありません。大切なのは、何を言うかだけではなく、どのように伝えるかです。自分の経験だけを基準にせず、今のルールを知り、相手の尊厳を大切にしながら関わること。それが、信頼関係を少しずつ育み、誰もが安心して関わり合える組織や社会をつくる第一歩だと考えています。

2026/10/27

▲ページの先頭へ